栄養コンシェルジュ #6
みなさんこんにちは
前回は、脂質の分類の途中から始まり、たんぱく質の分類、消化吸収に関わる臓器、消化吸収に関わる臓器の機能の胃までお伝えしました、
今回は、膵液と胆汁の役割からお伝えしていきます。
今回のコラムは
- 栄養指導している人
- ダイエットしている人
- 毎日の料理に困っている人
それではやっていきましょう
消化吸収に関わる臓器の役割
②栄養の消化吸収に関わる消化管の機能
消化吸収における膵液と胆汁の役割
膵液は三大栄養素である炭水化物、脂質、たんぱく質を分解する弱アルカリ性の消化酵素です。
胆汁には消化酵素は含まれていないため栄養成分を直接消化しませんが、脂肪を乳化(ミセル化)させ膵液のリパーゼの働きを助けています。
十二指腸における乳化とは、本来、水に溶けない脂質を胆汁(界面活性剤を含む)が包み込むことで水溶化する反応です。
脂肪を乳化することで水溶性の小さな粒状に包み込み、膵液と混ざり合うことができるようになります。
小腸(空腸、回腸)の消化酵素と栄養の吸収
ほぼ全ての栄養素は、空腸(上部小腸)で吸収され、食物繊維などが多い食事だと回腸(小腸下部)で吸収されます。
摂取した水分のほとんど(約80~90%)が小腸で吸収され、残りは大腸で吸収されます。
小腸には微絨毛というヒダが無数に存在しており、広い表面積を獲得しています。この広大な面を有する小腸で余すことなく栄養成分を吸収する仕組みを持っています。微絨毛を広げた表面積を概算すると、テニスコート一面分の面積になるといわれています。
微絨毛は消化酵素を分泌しており、栄養成分はとことん消化されながら吸収されていきます。
乳糖不耐症は、乳製品を摂取した後に下痢などを起こしてしまうことです。原因は、小腸から分泌される乳糖の消化酵素であるラクターゼ活性の低下です。
小腸のラクターゼ活性は乳児では高く、成長とともに低下します。その結果、乳糖が分解できず下痢を起こしてしまいます。
昔のヨーロッパの人々は厳しい自然の中で遊牧生活の中で乳製品を大人になっても食べていたので、現在でもほとんどの欧米人では成人後もラクターゼ活性を十分保有しています。
一方日本人は、四季があり自然豊かだったことから定住して計画的農耕や狩りをして暮らしていたため、遊牧せず、動物肉やその乳製品を食べる習慣がなく、現在でも乳製品摂取後に下痢を起こす人がいます。
環境が食文化を形成し、民族の体質を生み出しているということがよくわかりますね。
③消化管ホルモン
消化管ホルモンとは
消化管の中を通過する食物を、円滑かつ効率的に消化吸収できるように、臓器同士が連絡を取り合うその手段として、消化管ホルモンが分泌されます。
消化吸収において、消化管ホルモンが臓器間の連携をとっています。
主な消化管ホルモン
ガストリン
食物が胃に入り、胃内のpHがアルカリ化するとガストリンが血液中に分泌され、胃液を分泌させます。
つまり、食物がきたことを胃に知らせ、胃酸を分泌して食物を酸性化するきっかけとなるホルモンです。
グレリン
グレリンは胃から分泌される”食欲を促す”ホルモン
グレリンは、空腹時に分泌が促進され、食物が胃に入ると分泌が止まります。
セクレチン
十二指腸や空腸から分泌されます。
膵臓に働きかけて、膵液をアルカリ性に変化させ、胃から腸に送られてくる食物の酸性を中和して、消化酵素が働きやすくしています。
コレシストキニン
十二指腸や空腸から分泌されます。
空腸内に消化に時間がかかる食品(脂質など)が存在すると、胃の排出を止めてしっかり消化する時間をつくります。
揚げ物や油の多い食事は、しばらく時間が経っても満腹感や胃もたれを感じることはないでしょうか?コレシストキニンが胃排出を止めているからなのです。
戦国の時代、ごま油などを大量に飲んでおき、胃の排出を止めておくことで毒殺されるのを防いでいました。ここにもコレシストキニンが関わっていたのです。
モチリン
胃から大腸まで広く分泌されるホルモン
空腹時に進行性胃腸運動を調節しています。
進行性胃腸運動とは、胃から回腸末端まで伝播的に消化管が大きく動く蠕動運動のことで、食物残渣やガスを消化管下部の方へ大きく移動させます。
小腸内を一気に清掃して微生物の繁殖を防ぐ働きがあります。
このときお腹が「ぐうっ」となります。
胃抑制ペプチド(GIP: gastric inhibitory peptide)
小腸上部から分泌されます。
膵臓に働きかけることで摂取した糖質の量に応じてインスリンの分泌量を増やし、食後高血糖を防いでくれます。
しかし、糖尿病などで高血糖状態が長く続くとGIPの働きが失われ、インスリン分泌反応が遅れてしまい、食後高血糖になってしまいます。
GIPは脂肪細胞に働きかけ、摂取した脂質の蓄積を活性化します。
特に、飽和脂肪酸(動物性脂肪)を摂取した際に分泌が増え、肥満の原因となります。
多価不飽和脂肪酸(魚性脂肪)では飽和脂肪酸に比べてGIP分泌は少なく、肥満予防につながります。
骨を形成する骨芽細胞に働きかけると、骨形成を促します。成長期、骨折状態、骨粗鬆症予防にはGIPを分泌させることが望ましくなります。
食物繊維を多く摂取すると消化が遅れ小腸上部で栄養が吸収できず、小腸下部にまで移動します。するとGIP分泌量は低下します。
この現象を利用することでGIPによる脂肪蓄積作用を防いで体脂肪増加を防ぐことができます。
ただし、GIPは太らせる悪いホルモンではなく、効率よくエネルギー源を確保し、飢餓に備えるための重要なホルモンです。
グルカゴン様ペプチドー1(GLPー1:glucagon-like peptide-1)
小腸下部から分泌されます。
胃に働きかけて胃内容物を強烈に遅延させて満腹感を持続させ、さらに脳に働きかけて強い食欲抑制を引き起こします。
GIPと同様に膵臓に働きかけることで、摂取した糖質の量に応じてインスリンの分泌量を増やし、食後高血糖を防ぐことができます。
糖尿病になっても効果が失われず、糖尿病治療薬としても活用されています。
神経保護作用、免疫調整機能、腎保護作用、心保護作用などがあります。
運動することでも分泌が高まり、運動時の食欲低下を引き起こします。
GLP -1は低酸素環境で分泌されることがわかっており、高所での食欲低下の原因となっています。
GLP -1、GIPを総称してインクレチンと呼ばれます。
膵臓のホルモン(主に代謝に関わる)
インスリン
膵臓のランゲルハンス島のβ細胞から分泌されます。
脂肪細胞に働きかけると脂質を脂肪細胞に取り込んだり、過剰な血糖を脂肪細胞に入れて体脂肪(中性脂肪)に変化させて貯蔵することができます。
骨格筋に作用するとグルコースとアミノ酸を取り込み、筋タンパク質の合成を促進します。
肝臓の糖新生を止めて肝グリコーゲンを蓄えます。
インスリンの分泌は食後約2時間です。
グルカゴン
膵臓のランゲルハンス島のα細胞から分泌されます。
肝臓に働きかけてグリコーゲンを分解し、グルコースを放出し、低血糖にならないようにしています。
筋肉に働きかけて、アミノ酸を遊離させて肝臓へ届けアミノ酸は糖新生されて血糖となり、肝グリコーゲンを節約しながら血糖を維持します。
脂肪細胞に働きかけて中性脂肪を放出してエネルギー供給を助けています。
グルカゴンの分泌はインスリンの分泌が終わってから始まります。
ホルモン一覧表
名称 | 働き | 分泌機能 |
ガストリン | 胃酸を分泌して食物を酸性化 | 胃で分泌 |
グレリン | 摂食の促進、成長ホルモンの分泌を促進 | 胃で分泌 |
セクレチン | 胃酸の混ざった食物の酸性を中和 | 十二指腸、小腸上部で分泌 |
コレシストキニン | 胃内容排出の遅延、胆汁の分泌 | 十二指腸、小腸上部で分泌 |
モチリン | 進行性胃腸運動を調節 | 胃からバウヒン弁まで広く分泌 |
胃抑制ペプチド(GIP) | 胃酸の分泌抑制、脂肪蓄積を活性化、骨形成の促進 | 小腸上部で分泌 |
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1) | 胃内容物の排泄を遅延、食欲を抑制 | 小腸下部 |
インスリン | 細胞の栄養素の取り込みを促進、肝臓の糖新生を抑制 | 膵臓のβ細胞 |
グルカゴン | 肝グリコーゲンの分解を促進、アミノ酸の糖新生を促進 | 膵臓のα細胞 |
本日はここまで
ではでは^^