運動は万能薬 〜統合的運動生成概念に基づく運動療法〜Vol.3
みなさんこんにちは
前回は、動きの評価をお伝えしました
今回は、実際の運動療法の処方までやっていきます
- 運動療法の進め方がイマイチよくわからない
- そもそも動作から何をみて評価すればいいのかわからない
- 何を目的に運動をやってもらってるかぼんやりしている
- 運動から動作分析をして評価することができる
- 身体の仕組みを理解した上で運動療法を提供できる
- 運動でクライアントが抱えている問題を解決できるようになる
運動療法・トレーニングの基礎
運動の多様性がキーワードになります。同じ動きを繰り返し練習するよりも、いろんな運動をしたほうがいろんな感覚が入力されます。
脊柱の負荷から運動療法を考える
屈曲
伸展
回旋
側屈
の順番で脊柱に負担が大きくなります。難易度もこの順番です。
運動の負荷量コントロール
運動の負荷量の目的は、「動きを変える」ピラティスでいうところの、動きの学習。運動学習ですね。体の使い方を変えるということです。筋肉をつけることが目的ではありません。
負荷の原則は
基本は自重
適切に運動するためのツールとして、セラバンド、ピラティスリング、バランスボール、ストレッチポールを使用することはあリマス
負荷量のコントロールは
- レバーアームの長さ
- 支持基底面の広さ
- 回数と可動域
正しく運動できている基準は
- 代償がない
- フルレンジで10回程度施行可能
- 筋肉が震えてきつい
ここまでの流れをまとめると
- 運動で体性感覚、視覚、前庭感覚にアクセス
- 体性感覚には、フルレンジ・ねじり。視覚には、眼球運動。前庭感覚には、頭部の位置変化、重力を感じるような体勢・速度変化
- 運動以前に呼吸は整える
- 静的姿勢はあくまで目安。動きの中で固定部位と過剰運動部位がどこか。全体と局所でみていく
運動療法
評価やエクササイズまでの流れは
- 全体の動き評価
- 局所の動き評価
- 筋膜ラインからの動きの評価
- 運動を通して、感覚入力
それでは、全体・局所とみてきた動きを筋膜ラインごとに分けてさらに評価し、評価に応じた運動を処方するまでの流れをみていきます。
SBL(スーパーフェイシャルバックライン)
評価
- 立位評価→膝の過伸展、アライメントから短縮を推測
- 前屈→お尻が後ろに移動するか、骨盤の床との平行度合い、脊柱のカーブを評価
- 端座位評価→骨盤後傾をみる
- 長座位→骨盤後傾、膝の屈曲から短縮筋の推測
- 四つ這いでの脊柱屈曲伸展→固定部位・過剰運動部位を評価
- ロールオーバー→ロールオーバーの状態を維持して、頸部の回旋可能かチェック
- ロールアップ→ヘッドフォワードの代償か出るか評価
エクササイズ
- 仰向けでニュートラルポジション(頸椎~腰椎までのバックラインの調整)
- テーブルトップポジション(頸椎と腰椎のバックラインの調整)
- ロールアップ(頸椎~胸椎のバックラインの調整)
- 長座位からのロールダウン(ハムストリングス、下腿三頭筋、脊柱全体のバックラインの調整)
- 転がりゆりかご運動(脊柱全体のバックラインの調整)
- ロールオーバー(脊柱全体のバックラインの調整)
- スパインストレッチ(ハムストリングス、下腿三頭筋、脊柱全体のバックラインの調整)
- 四つ這いでのキャットカウ(脊柱バックラインの調整)
- 端座位の骨盤前傾・後傾(腰椎爆ラインの調整)
- 端座位のスパインストレッチ(脊柱全体のバックラインの調整)
- 端座位の股関節ストレッチからの立ち上がり(ハムストリングスのバックラインの調整)
- 立位からのスパインストレッチ(バックラインの調整)
- 立位からのヒールレイズ(下腿三頭筋の調整)
- 立位からの膝屈曲ランニング(下腿三頭筋の調整)
SFL(スーパーフェイシャルフロントライン)
評価
- 立位評価→特にスウェイバックが多い
- 後屈評価→お尻が前にいかない→腸腰筋・大腿直筋短縮示唆
- 脊柱カーブしてない→大胸筋・腹直筋短縮示唆
- 頸部の過剰後屈→胸椎可動性低下示唆
- 四つ這い脊柱屈曲伸展→固定部位と過剰運動部位
- スワン→脊柱のカーブから可動性と筋出力をみる
- ヒールレイズ→母趾球で踏めているか。できない場合は前脛骨筋の短縮示唆
- サイストレッチ→正座時での伸張感は足趾伸筋や前脛骨筋の短縮示唆、正座のまま後方に身体を倒すことができない場合は大腿四頭筋の短縮示唆
- 端座位から体を後ろに20°倒し、頸部回旋ができるか→できない場合は胸鎖乳突筋の短縮示唆
エクササイズ
- うつ伏せニュートラル(フロントライン全体の調整)
- うつ伏せニュートラルからのヘッドアップ(前胸部の調整)
- うつ伏せからon elbow on hand(前胸部~大腿部の調整)
- うつ伏せから股関節伸展(大腿四頭筋の調整)
- うつ伏せからスイミング(前胸部~大腿部の調整)
- 四つ這いからの脊柱屈曲伸展(前胸部の調整)
- 正座でストレッチ(下肢のフロントラインのストレッチ)
- サイストレッチ(大腿四頭筋)
- 片膝ニーリング→上肢挙上&頸部回旋(頸部~下肢フロントラインの調整)
- 立位からの上肢挙上(頸部~腹腔フロントラインの調整)
LL(ラテラルライン)
評価
- 立位評価→左右差をみる
- 足を閉じて側屈評価→腰椎の過剰運動、骨盤挙上、骨盤のスウェイを評価
- マーメイド→脊柱の屈曲、頸部の屈曲の代償を評価
エクササイズ
- マーメイド
- マーメイドスワン&ツイスト
- 四つ這いからの側屈
- 立位からの側屈
SPL(スパイラルライン)
どんなラインか
スパイラルという名の通り身体をぐるっと回るように存在するラインです。
後頭骨・乳様突起・軸椎横突起→下位頸椎棘突起・上部胸椎棘突起→肩甲骨内側縁→外側肋骨→腹部腱膜・白線→腸骨稜・上前腸骨棘→脛骨外側顆→第一中足骨底→腓骨頭→坐骨結節→仙骨→後頭骨
評価
立位回旋評価(開脚・閉脚)→開脚の方が可動域が広がる場合、下肢のスパイラルラインの影響を示唆。頸椎屈曲、体幹屈曲の代償
頸部回旋評価
エクササイズ
- 四つ這いから胸椎回旋
- うつ伏せからの下肢回旋
- 立位ランジからの回旋
AL(アームライン)
どんなラインか
DFALディープフロント、SFALスーパーフェイシャル、DBALディープバック、SBALスーパーフェイシャルバック
DFAL
3~5肋骨→烏口突起→橈骨粗面→橈骨茎状突起→舟状骨・大稜形骨→母指外側
SFAL
鎖骨内側3分の1、肋軟骨、下位肋骨、胸腰筋膜、腸骨稜→上腕骨内側縁、上腕骨内側上顆→手指手掌面
DBAL
肩甲骨内側縁→上腕骨頭→尺骨肘頭→尺骨茎状突起→三角骨、有鉤骨→小指外側
SBAL
後頭骨、項靭帯、胸椎棘突起→肩甲棘、肩峰、鎖骨外側3分の1→上腕骨三角筋粗面→上腕骨外側上顆→手指背側面
評価
- 立位評価→上腕のアライメント(屈曲位?内旋・外旋位?)
- リバースプランク評価→アームラインの前面を評価。
- ロングバックストレッチ→アームラインの前面評価。臀部の要素を除いたもの
- スイミング評価→バックラインの筋出力も評価。
エクササイズ
- スイミング
- リバースプランク
- ロングバックストレッチ
FL(ファンクショナルライン)
どんなラインか
BFL
上腕骨体→腰仙連結→仙骨→大腿骨→膝蓋骨→脛骨粗面
FFL
上腕骨体→第5、6肋骨→恥骨結合→大腿骨粗線
IFL
上腕骨→肋骨端(第10~12)→上前腸骨棘→鵞足、脛骨内側顆
評価
- スイミング→腕が上がらない→FFLの短縮示唆
- シェイプザヘッド→肘が伸びない→BFLの短縮示唆
- マーメイド回旋→伸張感感じる所が短縮示唆
エクササイズ
- 長座位からの回旋+屈曲(BFLの調整)
- 開脚(FBLの調整)
- スイミング(FFLの調整
- マーメイド回旋(BFL、FFLの調整)
DFL(ディープフロントライン)
・後部ライン
後頭骨、頸椎横突起→胸腰椎椎体→坐骨→尾骨→大腿骨内側上顆→脛骨、腓骨→足根骨、足趾
・前部ライン
下顎骨→舌骨→胸骨柄→肋骨、剣状突起→胸腰椎椎体→大腿骨小転子→大腿骨粗線
評価
- 立位で股関節最大外転位で体幹の回旋
- ランジからの体幹回旋評価
- フロッグ評価
エクササイズ
- 前後開脚からの回旋
- 開脚
- ランジからの回旋
まとめ
全体・局所・筋膜ごとの評価をした上で、運動療法を提供していくことが大事ということを学びました。まずは、筋膜ラインの理解から始めたいですね。
引用
吉田さんのnoteはコチラ
https://note.com/pt7/n/n16f81f1d0a29
筋膜の教科書はコチラ