【RLOG】心臓弁膜症に対するリハビリ 後編
みなさんこんにちは。今回は、心臓弁膜症に対するリハビリの後編になります。
前編はこちらから
今回のコラムは
- 理学療法士
- 心臓リハに関わる人
- おばあちゃんがいる人
それではやっていきましょう
前回のおさらい
友人の祖母、通称ばあが今年の年明けから体調が優れず病院に受診したところ、心臓弁膜症と診断され、以前のような元気がないことから私がリハビリしにいきました。
医学的情報収集と問診である程度ストーリーを導出することができました。去年10月から心臓の働きが障害されてきたところに年末年始の活動量増加によって心負荷が高まり、息苦しさなどの症状が出現した。背中と脇腹の痛みも併発していたことから、年末年始の大掃除の影響と循環障害による呼吸の乱れにより交感神経優位となり、痛みも併発していたのではないかと予測を立てたところまでお伝えしました。
この問診からのストーリーの導出を元に評価~治療まで行っていきました。
評価
評価項目は以下の項目です。
- 血圧
- 脈拍
- 骨折リスク
- 座位アライメント
バイタル
まずは現在の血圧ですが、
座位:168/87
だいぶ高いですね。
続いて脈拍を橈骨動脈の触知で測定しました。心不全による拍動のリズムの不整があるかどうかを見極めるためです。
70回/分 リズム不整なし
骨折リスク
続いて、背中の痛みがあるということで圧迫骨折の疑いが少なからず疑われるため、はじめに圧迫骨折か否かを明らかにしました。ただ、お医者さんではないためあくまで診断はできないので、骨折の可能性は低いというところまでしか言えません。それでも、受診した際にレントゲンも撮影しておりレントゲンの結果からみても圧迫骨折ではないと言われていましたので、念の為の確認程度に圧痛を確認しました。確認部位は、第12胸椎から第5腰椎までを確認し、もちろん圧痛はなしでした。
評価を進めていく中で、「お勝手仕事をしていると楽」との発言がみられました。このことから、座っている姿勢より立っている姿勢の方が今のばあにはいいんだなということが推測され、立位での治療姿勢は反応が良さそうだということを推測しました。
座位アライメント
次に座位で脊柱のアライメントの評価をしました。
結論から言うと、腰椎部に左凸の側弯がみられました。
しかし、これは前からあった元々のものであり今回の腰痛とは関係ないと判断しました。ただ、左凸の側弯が今回の騒動で強まっている可能性があり、側弯が強まると脊柱の筋肉のバランスが崩れるため身体が効率よく働かなくなるため、介入の余地はあるなという印象でした。そこで腰椎をひとつひとつみていくと、腰椎全体的の硬度が高くなっていました。また、呼吸も浅く胸郭が動いていませんでした。
左凸の側弯があったので、側弯を強めている寝方をしていないか確認するため普段の寝方について聞きました。「普段いつも寝るときは、右と左どっちを下にして寝てる?」ばあはいつも左向きで寝ている様子。これがラクだと。通常、側弯の方は、凸側を上にして寝る方が上から重力がかかり側弯が軽減される方向に力が加わるので楽なハズですが、ばあの場合はその反対で寝ていました。また、普段ばあはこたつで寝る習慣があるみたいですが、こたつに寝転ぶ時に痛みが出現するということで、横になる動作を確認しました。横になるときは、床に座ったところから仰向けになるように横になっていました。側弯を考慮した動作指導を行うことで疼痛コントロールを自分自身でできると感じました。
以上の評価結果から、年末年始の過労による腰部への負担が増えたことによる腰背部痛と痛みによる交感神経優位となり呼吸が浅くなり、持病の心不全が悪化したのではないかと考えました。そのため、治療の順番としては腰→呼吸というような順番で治療していけば症状の改善が図れると予測しました。
治療
評価結果から治療で行うことは以下の3つ
- 腰椎部の硬度改善
- 呼吸機能の改善
- 動作指導
まずは、腰椎部の硬度の治療ですが、治療姿勢をどうするか。これはシンプルに楽な姿勢or腹圧が上がる姿勢です。側臥位で行いたいのですが、ばあの場合は左凸の側弯があるため、必然的に右側臥位での治療姿勢が選択されます。本人は左向きが楽という認識でいますが、恐らく身体と脳がマッチングできていないため、脳が誤った認識をしている状態にあります。実際、右側臥位をとってもらうと痛みもなく楽とのこと。右側臥位で腰椎部の硬度を改善させていきました。硬度が取り切れるとだいぶ楽になったとのこと。その後、側臥位を経由しての寝方の指導を行い、痛みなく横になれるようになりました。
最後に呼吸機能の改善です。呼吸機能の改善はシンプルに「腹圧を高めて換気量を増やす」です。ばあは痛みと心不全の影響から、呼吸が浅くなり交感神経が優位に働いている状態でした。この交感神経優位である状況から副交感神経優位にするために、呼吸をしやすい状態にしていきます。呼吸がしやすい状態というのが、”腹圧が高く換気量が多い”状態です。換気量を効率よく増やすためには、一回換気量を増やし呼吸数を減らすことです。一回換気量を増やすために腹圧を高めていきます。「腹圧呼吸」なんていう呼び方で最近では注目されていますがまさにそれです。要は、腹圧を高めて呼吸を楽にできるようにしました。実際のやり方はシンプルで立った状態で肩甲帯の上に手を置いて、ばあの呼吸に合わせるだけです。結論これだけでばあの腹圧は高まりました。
再評価
- 血圧 介入前168/87→介入後149/90
- 脈拍 70→63回
- 背中の痛みはほぼ消失
- 側弯の程度も減少
こんな感じで驚くくらい反応よかったです。念の為経過を追いましたが、翌日も1週間後も介入の効果が持続しており、1回の介入で完結しました。
まとめ
今回のばあのリハビリを経て感じたのが、ストーリーの導出がいかに大事かということでした。ストーリーを導出することで仮説検証の質が高まるし、仮にストーリーが間違っていたとしても次の仮説検証に移りやすいです。
みなさんも評価治療の中にストーリーを導出してみると見えてくるものがあるかもしれません。
ではでは~^^
評価・治療の考え方の勉強におすすめ