【Rlog】心臓弁膜症に対するリハビリ
みなさんこんにちは今回は今までになかった、リハビリログをお伝えしていきたいと思います。
このコラムは
- 理学療法士
- リハ学生
- トレーナー
それではやっていきましょう
症例紹介
今回は、心臓弁膜症と診断された友達の祖母のリハビリを行い、改めてストーリーを導出することの重要性を体験したのでみなさんにお伝えしようと思います。まずは、リハビリをすることになった経緯を簡単に紹介いたします。
年が明けた2022年1月4日夜私のところに友達から一本の電話が入りました。「ばあが息苦しさと背中と脇腹の痛みを訴えている。これから病院に連れていく」ばあとは私の友達の祖母のことで、友達は祖母であるばあと同居しており、その友達の家によく遊びに行くため私もばあにはとてもお世話になっていました。
そんなばあが急にそんな体調が悪くなって病院に行くというのでとても動揺しました。はじめは地元の総合病院に行ったそうですが、救急対応で本日中の診察に目処が立たないということで、ひとつ隣の救急クリニックに行ったそうです。そこで、呼吸音に雑音を認めたため、少し離れた循環器クリニックへ紹介状を書いてもらい、循環器クリニックへ行ったそうです。結果は、大動脈弁狭窄症の中等症でした。現時点では、すぐに手術適応レベルではなく、経過観察し、半年後に再診するということで診察は終了しました。痛み止めの処方をもらって事なきを得たそうです。
そして、1月10日私はリハビリをしにばあを訪ねました。リハビリに行く前に心臓弁膜症についておさらいしました。
心臓弁膜症のまとめ
心臓弁膜症の種類と発症頻度
肺動脈弁疾患 約1%
- 肺動脈弁狭窄症(PS)
- 肺動脈弁閉鎖不全症(PR)
三尖弁疾患 約10%
- 三尖弁狭窄症(TS)
- 三尖弁閉鎖不全症(TR)
大動脈弁疾患 約40%
- 大動脈弁狭窄症(AS)
- 大動脈弁閉鎖不全症(AR)
僧帽弁疾患 約85%
- 僧帽弁狭窄症(MS)
- 僧帽弁閉鎖不全症(MR)
・僧帽弁、大動脈弁において狭窄症と閉鎖不全症と合併している場合も多いため、合計が100%になっていない
・肺動脈弁狭窄症はほとんどが先天性
・閉鎖不全症は、逆流症と言われることもある
代表的合併症
▶︎心房細動(AF)→僧帽弁疾患
▶︎血栓による塞栓症→僧帽弁狭窄症
▶︎感染性心内膜炎→僧帽弁狭窄症以外の弁膜症に合併
▶︎肺うっ血や心不全→大動脈弁疾患、僧帽弁閉鎖不全症
▶︎心ブロック→大動脈弁狭窄症
障害された弁の構造と、弁前後の心腔内圧・血行動態を考えると理解しやすい
大動脈弁狭窄症(AS)
息切れ、狭心痛、失神発作、遅脈(脈拍の立ち上がりが遅くゆっくりと上行し、徐々に下降する脈)・小脈(収縮期血圧から拡張期血圧を引いたものが小さいこと)
AS→左室駆出抵抗↑▶︎心拍出量↓→血圧↓→失神発作、めまい、狭心痛
▶︎左室収縮期圧↑(左室圧負荷)→左室肥大→左心不全、狭心痛
疾患についてのおさらいはこんなところで。次は実際にばあの様子を見にいったところからお伝えしていきます。
評価
まずはじめに第一印象ですが、”元気がなく表情も暗い”でした。ばあはいつも会いに行くと、笑顔で大きな声で「どうも!」と迎えてくださるのですが、その時はいつもと違って小さい声でどこか苦しそうな表情で迎えてくれました。改めて、身体の不調がどことなくその人の雰囲気に出てしまうんだなと感じました。
問診
事前情報を整理すると、
- 息苦しさと背中、脇腹の痛みで病院受診。
- 診断は心臓弁膜症(大動脈弁狭窄症)
現病歴
ばあ本人から当時の状況を話してもらいました。
2021年12月31日 年末の大掃除をした。この時、ちょっと動きすぎちゃったなと自分でも感じていた。
2022年1月1~2日にかけて、何するにも息苦しくなってきた。この日から身体の調子がおかしくなった
1月3日 子ども達が家に遊びにきたため、1日忙しくなくしていた
1月4日 夕方頃ヒューヒュー息苦しそうにしているところを孫である私の友達が発見し、病院へ受診しにいった
ざっくりこのような経過を追っていました。そして、1月10日現在の様子は、1月4日の時のような息苦しさはなく、少し変な感じがするくらいとのことでした。背中の痛みは和らいでいたものの動くと背中が痛いとのことでした。特に、横になる時や、起居動作時に両方の脇腹が痛くなるとのこと。次に受診の様子を聴取しました。
受診の経過
まずは、地元の総合病院へいったそうですが、対応が遅く、隣の市の救急クリニックへ行ったそうです。そこで、レントゲンと血液検査と診察を行ったと。診察時の心臓の聴診で雑音が聞こえたため、さらに少し離れた市の循環器クリニックへの招待状をもらい、循環器クリニックへ行ったそうです。そこの循環器クリニックでは、精密検査は後日ではないとできないとのことで、その日は痛み止めを処方してもらったとのこと。そして、翌々日の1月6日に循環器クリニックに再診に行き、精密検査を行い、中等度の大動脈弁狭窄症の診断をうけました。また手術の必要性に関しては、すぐに行う必要はなく、経過観察で次回の受診は半年後ということになりました。1月8日辺りから、だいぶ楽になってきたそうです。
血液データ
血液検査の結果を確認しました。注目した値は、BNPとCRPの値です。BNPは心不全の指標として病気の状態を把握するために使われます。BNPは「脳性ナトリウム利尿ペプチド=Brain Natriuretic Peptide」 の略称で心臓で生成され分泌されるホルモンの名称です。心臓に対しての負荷が増加したり、心臓の筋肉が厚くなるとBNP量は増加します。BNPの基準値は、18.4pg/mLなのですが、ばあのBNPの値は”64.7”で心不全の診断の一歩手前の軽度の心不全の可能性があるため精査、経過観察という状態でした。
CRPは主に炎症の有無を示したものです。CRPの正常値は0.3mgですが、ばあのCRPの値は1.57でした。この2つの結果からわかることは、診断と症状がマッチしているなということです。(当たり前ですが笑)
既往歴と服薬情報
次に既往歴と服薬情報を整理しました。既往歴は、高血圧のみでした。
服薬情報を整理すると、
- オルメサルタン▶︎高血圧の薬 血圧上昇に関与するアンジオテンシン2を抑制する
- アムロジピン▶︎高血圧の代表的な薬 細胞内へのカルシウムの流入を減少させ血管を弛緩させる
- ビソプロロールフマル▶︎心不全、高血圧、狭心症の薬 心臓の過剰な働きを抑える
血圧の薬は何年も前から服薬していたとのことでしたが、上記のビソプロロールフマルに関しては、2021年10月から服薬しているとのことで、ここ最近服薬が始まっていました。ばあにこのことについて詳しく聞くと、心臓がちょっとという話をかかりつけのお医者さんから話があったということでした。
ストーリーの導出
ここまで話を聞いていくと、一本のストーリーが出来上がりました。元々活動的なばあ。既往歴に高血圧があるため慢性的に心臓の負担がかかっている状態2021年10月より心不全の薬の服薬開始。ついに、心臓への負荷が重なり、症状が表面化してきた。年末年始を迎え、いつも以上に活動的になった。このタイミングで身体と心臓に通常よりも高負荷がかかり、息苦しさと背中と脇腹の痛みにつながった。しかし、活動的だったのは年末年始だけだったので、しばらく時間が経つと、息苦しさは軽減し、身体の痛みが残存しているというような状況になっている。また、息苦しさを感じていた時期があったため、二次的に胸郭周囲の可動性が低下し呼吸が浅くなることで交感神経優位となり痛みも感じやすくなっているんだろうなと、このようなストーリーが導出されました。
なので、まだ問診の段階ですが、恐らく、胸郭周囲の結合組織の硬度を改善させることで、呼吸が深くなり、副交感神経優位とすることで、呼吸時の違和感、背中・脇腹の疼痛は軽減するだろうと予測を立てました。
まとめ
心臓弁膜症のリハビリの進め方ということで、病態生理から問診までをお伝えしました。まだ評価をしていませんが、この時点でだいぶ明確なストーリーの導出ができたと思いますのであとは、これを検証し結果に合わせた介入をしていくことで、愁訴を解決できると思います。本日は、問診までをお伝えしました。次回のところで実際の評価と治療についてお伝えしたいと思います。
ではでは^^
評価の考え方の参考書籍