PHI Pilates JAPAN FESTA 2021 #4包括的アプローチと感覚運動科学
みなさんこんにちは
前回は、感覚運動システム、感覚運動システムの問題、入力系へのアプローチまでお伝えしました。
入力系へのアプローチの続きからお伝えしていきます。
今回のコラムは
理学療法士
ピラティスインストラクター
運動指導に関わっている人
入力系へのアプローチ
体性感覚
クライアントが何にいい反応が出るのかを最初にパッとみることが大事です。
少し話が脱線しますが、
身体は柔らかければ柔らかいだけいいというような考えが未だに存在します。
身体が柔らかければ怪我をしないというのも強引な考えです。
例)SLR(膝伸ばしたまま脚を持ち上げていく)がすごくできる人がいるとします。この人のSLRで大事なことは、伸張感が得られているかです。
伸張感が得られずに、どこまでもSLRができてしまう人は、むしろ怪我がしやすいです。
それは、伸張感を得られないため、これ以上動かすと筋肉や腱が損傷するというのがわからないまま引き伸ばされて損傷してしまう可能性があるからです。
この場合は、筋紡錘という筋肉の長さを感知するセンサーに問題があることが多いため、ストレッチをして伸ばすことよりも、筋肉を収縮させ、収縮感覚を入力し筋紡錘のセンサーを正常に戻すことで、伸ばされた時に損傷が起きる前にセンサーが反応するようにすることが大事です。
同じような話ですが、股割りストレッチをおこなって、効く人と効かない人の違いの1つは、脳が股割りストレッチの伸張感覚を脅威ととるかとらないかです。脅威ととるかとらないかで可動域が改善するかしないかが決まります。
そのため、一概に可動域があるから大丈夫、可動域ないからダメというように判断するのではなく、緊張(感覚入力系)の問題があるのか、そもそも筋の長さの問題なのかをみていくことが重要です。
腰痛の人
→脊柱のコントロールができない人は、脊柱全部緊張させちゃおうという反応になり、腰痛につながる
自動可動域は必要。可動域が大きくとれる方が動作の質、動作パターンが多くなり、動作の多様性につながる。
簡単なエクササイズの中で体性感覚をうまく扱えているかを確認する
→リフォーマーはキャリッジが動くというエラーが本人自身で知覚しやすい
キューイングで身体感覚に変化が出ることはない?
エクスターナルキューを使った方がいいというような話があるが、目的によってキューイングも使い分けた方がいい。
個人的には、インターナルキュートエクスターナルキューとでどちらの方がクライアントの反応がいいかを判断して使い分けるのがいいかと。
刺激の偏りは何事にも良くない。
デジタルな刺激は脳的によくない
ただ、だからといってスマホを禁止にするというような0か100で考えるのは良くない。
プライマリケアの目的は、元々持っているポテンシャルを再獲得するということ。
視覚
視覚の上下の動きは多裂筋の働きに相互に関与している。(例 眼球運動と後頭下筋群の働き)
眼球運動
- パシュート(滑動性追跡眼球運動):動く指標を継続的に捉える眼球運動 例)回転寿司で自分の目の前にくるまで注視を続けられるか
- サッケード(急速性眼球運動):対象物に視線を向ける高速で一過性の眼球運動 例)モグラ叩きで飛び出てきたモグラを素早く眼で追いかける
- 輻輳と開散(輻輳:近くを見るときに両目が寄ること 開散:遠くを見るときに両目が離れること):
- 周辺視野:固定視を中心として、30°以内の視野を「中心視野」それよりも外側を「周辺視野」という
- 固定視:一つのものに注意を集中して見る能力 例)目の前に置かれた消しゴムをキョロキョロせず見続けられるか
眼球運動と読書
読書では、パシュートとサッケードではサッケードで読んでいます。
文章をいくつかのブロックに区分けし、そのブロックごとに順番に固視していきます。
速読が上手な人は、一度の固視で目に入る文字数が多く、サッケードが正確ということです。
これはスポーツなどの一瞬の状況把握、判断においても重要な役割です。
視覚へのアプローチ
- 前庭動眼反射の促通(眼球固定の頭部回旋)
- 眼球と頭部を同じ方向に動かす
- 目印のところにジャンプする
- 自分がその場で回転してる間にボールを投げてもらってキャッチして投げ返すみたいなのもあり
前庭感覚
耳石(直線加速度)・半規管(回転加速度)
→平衡感覚と言われる。頭部の位置を脳に知らせる
前庭へのアプローチ
極力頭部が動くエクササイズを入れるのが理想
リフォーマー・チェアーは球形のうへの感覚入力が可能
ピラティスのイクイップメントは前庭感覚入力にも効果的
ロールオーバーやローリング系のエクササイズ
入力系へのアプローチをここまでお伝えしてきましたが、いかがでしょうか。
一見出力系のエクササイズに見えても、実は入力系のエクササイズをおこなっていましたというように、エクササイズの目的をはっきりさせてエクササイズを処方したいですね。
続いては、出力系のエクササイズについてお伝えしていきます。
出力系へのアプローチ
近藤先生は出力系のエクササイズの強度を6つの分類に分けて考えていました。
1 剛性・動的安定性 |
2 中閾値運動(>筋力の10%) |
3 分節運動(<筋力の10%) |
4 低閾値運動(<筋力の10%) |
5 脱力・リラックス |
一般的に行われているエクササイズのほとんどは中閾値運動である。また、ほとんどのエクササイズでは、運動のバリエーションが少なく、決まった動きの反復になってしまいますが、股関節屈曲であれば色んなバリエーションで行い、動作パターンの多様性を学習していくことが重要です。
理想は、一つのエクササイズが上手くなる前にエクササイズのバリエーションを変えていくことです。
運動学習的には、色んな種類のエクササイズを行うほうが、一つのエクササイズを極めるよりも、ADL場面に汎化しやすいです。
一つのエクササイズを極めてしまうと、他のエクササイズを行うときに動きの癖が出てしまいます。
臨床現場でよく見かけるのは、そもそも高閾値運動から始めてしまう先生・指導者や低閾値運動の時に高閾値戦略をしてしまう人。
まずは、1番下位の脱力・リラックスができるようにする。脱力ができないと筋の長さ張力曲線からも筋出力は得られません。
ピラティスのイクイップメントであるプッシュスルーバーは中閾値に分類されます。
あくまで中閾値運動は全力でやるものではないため、できないならエクササイズのレベル落とした方がいいかもしれません。
エクササイズの強度を上げるための目安として、分節運動ができているかの判断は、3回綺麗にできるかで判断する
よくインストラクターでありがちなのが、できないエクササイズをできるようにすることが目的となってしまって、本来の目的である体を良くすることから外れてしまうケースです。
できないエクササイズあできるようになろうと、そのエクササイズばかりを練習することは、動作パターンの多様性の観点からあまり好ましくなく、むしろ多様性を損失するような指導をしているため、かえって悪くなるケースも珍しくないです。
むしろ、色んなエクササイズをおこなっていくうちに、無意識に今まで使えていなかった運動パターンを学習していき、自然とできなかったエクササイズができるようになることが理想である。
・「身体鍛えたい」という満足度考えたら、感覚運動系は10分で整えて、メインのエクササイズを行うのがベスト。他のエクササイズで感覚をフル活用していくのが理想です。体性感覚、前庭覚、視覚の評価して、そこにアプローチする
・初期評価は短く10分で完結させる。最低限の評価を行うことがクライアントの満足度向上につながる
・入力したい感覚が入っているエクササイズをさりげなくエクササイズに組み込む
例)前庭系の感覚入力ができるエクササイズ
・最終的にスキル運動の時間を増やすために、リスク管理をするのがトレーナーの役割です。得意な動きをやるのは後。苦手を治すっていうのがイメージ。弱いところを鍛える。
今回のコラムで近藤先生のセミナーのまとめは終了になります。
また、別のセミナーについても同様な形でお伝えできればと思います。
ではでは^^