統合的運動生成概念 #2
みなさんこんにちは
前回は統合的運動生成概念の導入部分についてお伝えしてきました。
いよいよ本題に入っていきます。
このコラムは
理学療法士
理学療法士学生
運動に携わっている人
それではやっていきましょう
身体心理学 心理生成理論
身体心理学とは、身体の動きが心の状態に影響するということを研究する学問である
身体心理学にはキーとなる考え方があります。
結論から言いますと、
動きが心を作る=心はカラダに散在する
ということです。
このことをわかりやすく説明します。
みなさん出勤・通学の時を思い浮かべてください。
出勤・通学の時って、トボトボ歩いていたり、俯きがちに歩いていたり、携帯電話をずっと見ていたり、挨拶の声が小さかったりしていませんか。もしくはこんな風に通勤・通学してる人を見たことある人はいませんか。
このような人たちは元気に見えますか?元気がなさそうに見えますか?
答えは簡単ですね。当然元気がなさそうに見えますよね。
きっとそれって気のせいではなく、実際にそう見える人に聞いてみると本当にその通りってことが多いです。
それでは、今度はスキップしている人を見たらどう思いますか?
楽しそうに見えますか?つまんなそうに見えますか?
当然楽しそうに見えますよね。
つまり、動きが心を作るということなんです。
身近な例でいうと、「吊り橋効果」です。
吊り橋効果は、高いところに身を置くことで、相手をドキドキさせ、まるで自分にドキドキしているというように錯覚させることですが、まさに吊り橋効果こそ、身体心理学の「動きが心を作る」を体現しています。
嬉しいからバンザイするのではなく、バンザイするから嬉しい気持ちになるのです。
喜んでバンザイしたのではなく、バンザイをして喜んだんです。
これは運動表現は感情表現より先であるということです。
そして動きが心を作るためには、
6秒間なりたい心の運動感覚を入力する
これだけで、動きが心を作ることができます。
統合的運動生成概念では、最初にこの身体心理学を学びます。
これには理由があり、「口角を上げることで、好きという運動感覚を入力し、学習効果を高めるため」です。
これは、学習に限らず、みなさんの日々の生活にも共通して取り入れられるものです。
うつむきがちな通勤・通学時に顔を上げて、笑顔で通勤・通学してみる。それだけで憂鬱な気持ちは無くなります。
何気なく行っていた挨拶を元気よく挨拶してみる。それだけでいい気分になります。
リハビリの場面で例えると、リハビリ中は常に笑顔で行った方が楽しい気持ちでリハビリができます。そして、その楽しい気持ちが患者さんにも伝わります。
楽しいリハビリと楽しくないリハビリではどちらの方が効果的でしょうか。答えは明確ですね。
まとめますと
- 人の心理状態は、運動感覚が作っている
- 動きが心を作る
次の分野に移ります
人の形
今回のテーマは「形が動きをつくる」です。
形が動きを作る代表的なものが”機械”です。
機械の動きは、機械工学である「リンク機構」で説明ができます。
リンク機構=一ヶ所動くと決まった方向に決まったように動く
歯車ををイメージするとわかりやすいです。何個かの歯車が組み合わさっていると、一つの歯車が動くと、その歯車の動きに応じて、他の歯車も動いていきます。
このような動きがリンク機構ですが、
人で考えたら、「骨」が動きをつくりますが、果たしてこのリンク機構だけで人の動きを説明できるのでしょうか。
リンク機構についてお伝えしていきます。
機械の歯車同士は部品が繋ぎ止めていますが、人のリンク(=骨)は何が繋ぎ止めているのでしょうか。
答えは、「結合組織」です。例)関節包、靭帯
人の動きでも、特定の関節構造と関節包と靭帯によるパックにより、一定の連鎖の波及(リンク機構)がみられます。
それが「骨連鎖」です。
代表的な骨連鎖を紹介します。
大腿骨内転→腸骨後傾
外転→腸骨前傾
大腿骨内旋→腸骨前傾
外旋→腸骨後傾
次は実際に骨連鎖を体感してみましょう。
前腕回外(手のひらが前)の時と回内(手のひらが後)の時とで、腕の”ひきやすさ”と”押しやすさ”はどうなるでしょうか?
おそらく、
前腕回外(手のひら前)の時は、腕が引きやすく、押しにくかったんじゃないでしょうか。そして、前腕回内(手のひら後)の時は、腕が引きづらく、押しやすかったんじゃないでしょうか。
このように、骨連鎖によって動きの波及が起こり、動きやすい・動きにくい運動方向が決まります。
しかし、地球という外力下で姿勢・運動生成をしているときの骨連鎖は必ずしも一様ではなく、骨連鎖だけでは人の運動は語れないのです。
しかし、例外ですが、人の形で骨連鎖しか生じない場所が一つだけあります。
それは、
踵骨ー距骨ー下腿骨
です。
どんな時でも一定の骨連鎖しか生じません。
荷重下においては、
距骨下関節の回内(外返し)が起きると、
踵骨:外反
距骨:底屈・内転
下腿骨:内旋
距骨下関節の回外(内返し)が起きると、
踵骨:内反
距骨:背屈・外転
下腿骨:外旋
これらの足部の動きは細かいため、また別のコラムでお伝えします。
なぜ骨連鎖しか生じないかというと、
距骨下関節は、”ほぞ継ぎ構造”と言って関節のはめ込みと結合強度が強固であるからです。
このように関節の構造上、運動方向が決まってくるのが踵骨ー距骨ー下腿骨の運動連鎖です。
これはつまり、下腿~足部の関節構造が破綻していると、正常な運動連鎖が波及せず、身体に何らかのエラーが発生しやすくなるということです。
例えばですが、足関節の靭帯損傷を受傷すると、距骨下関節の関節構造が破綻し正常な骨連鎖が波及せず、歩きにくかったり、どこかを痛めてしまう可能性があります。
これは臨床場面でもよくみられますが、足のアーチが破綻している人は、上行性の運動連鎖が正常に波及せず、どこかで代償した結果、代償部位に問題が生じることがあります。
このことから、踵骨ー距骨ー下腿骨の関節構造を正常に保つことは、円滑な運動を波及させる上で重要な役割を担っています。
これが「形が動きをつくる」という意味の本質です。
続いて、運動生成している時の骨連鎖が必ずしも一様ではないことについてお伝えていきます。
まずは、運動生成における連鎖のバリエーションを体験してみましょう。
2人1組になり、相手の肩甲骨に手を置きます。この時、本当に触れるだけ強さで手を置きます。
次にその状態で、相手に首を左右に動かしてもらいます。左右に動かした時の肩甲骨の動きを手で感じましょう。
どうですか。右を向くとき、左を向くときとで、常に同じ方向に肩甲骨は動いているでしょうか?
おそらく、微妙に毎回違う方向に肩甲骨が動くと思います。
それでは、次にその中でも、肩甲骨のどのような動きが1番優位ですか?1番肩甲骨が動く方向はどんな動きでしょう?
おそらく、肩甲骨外転の動きが優位の人もいれば、内転の動きが優位の人もいると思います。
最後に、その優位な肩甲骨の動きを止めて、首を左右に動かしてもらうとどうなりますか?
この止め方は、「動かないで」と心の中で思うだけで大丈夫です。肩甲骨に置いてある手の力は変えなくて大丈夫です。
おそらく、最初より首の動きが悪くなったと思います。
この体験から分かるように、運動生成において連鎖のパターンは毎回同じわけではないのです。
先程の踵骨ー距骨ー下腿骨のように必ずこの動きになるというような運動連鎖は起きないのです。これは、後に出てくる運動の多様性の部分にもつながってきます。
そして、おそらく首を動かした時に、肩甲骨がどんな動きをしているか正確に把握できる人はいないです。仮にこう動いているだろうなと主観で思っていても、客観的にみたら一致しない場合の方が多いです。
このことから、そもそも人の動きって自分では認知しづらいということがわかります。
よくリハビリ場面で「ここの骨をこうやって動かしてください」とキューイングしている場面を見かけますが、これは果たして有効なのでしょうか。
まとめますと、
踵骨ー距骨ー下腿骨のように形(関節構造)が動きをつくる
運動している時の骨連鎖は一定ではなく、多様性がある。
それでは、今回はここまで
ではでは^^