栄養コンシェルジュ#5
みなさんこんにちは
前回は、人類の体質、三大栄養素の分類の脂質の途中までお伝えしました。
本日は続きの一価不飽和脂肪酸からお伝えしていきます。
今回のコラムは、
- 栄養指導している人
- ダイエットしている人
- 毎日の料理に困っている人
それではやっていきましょう
三大栄養素の分類
②脂質の分類
一価不飽和脂肪酸
一価不飽和脂肪酸は植物に多く含まれます
食品カテゴリーマップのカテゴリー5(サラダ油やオリーブオイル、アボカドなど)、カテゴリー6(一部)の食品に多く含まれます。
多価不飽和脂肪酸
多価不飽和脂肪酸のうち、リノール酸とリノレン酸は植物に、その他は魚介類に多く含まれます。
ヒトでは糖質から脂肪酸を合成できますが多価不飽和脂肪酸は合成できません。
リノール酸とリノレン酸は食品カテゴリーマップのカテゴリー5(サラダ油やオリーブオイル、アボカドなど)の食品に多く含まれ、その他の脂肪酸はカテゴリー2B、Cの食品に多く含まれます。
③たんぱく質の分類
たんぱく質は生物が一定期間保有可能な身体の構成成分です。
植物にも含まれているので、植物からもたんぱく質を得ることができます。
たんぱく質は1gあたり4kcalです。
必須アミノ酸は9種類あります。
トリプトファンやリジンは完全にアミノ酸まで消化されなくてもジペプチドの状態で吸収されています。
食品カテゴリーマップのカテゴリー2A、B、C、D、Eの食品に多く含まれます。
たんぱく質の消化・吸収・代謝
食事たんぱく質(=アミノ酸がたくさん結合して立体構造になったもの)
↓消化
ジペプチド、アミノ酸(アミノ酸が2個以上結合したものをペプチド、2個をジペプチド)
↓吸収
アミノ酸
↓代謝
体タンパク(体内で様々な体タンパクとして再合成)
体重あたりのたんぱく質の必要量は加齢とともに低下します。しかし、高齢者では、
①体タンパク合成能が低下していること
②インスリン分泌量が低下していること
③食事摂取量が少なくなることから骨格筋は分解されやすい状態にあり、虚弱(フレイル)さらにはサルコペニアの状態になり、要介護に至る場合が多く問題とされています。
高齢者では、たんぱく質摂取量を極端に増やす必要はないが、減らさないようにする方がよく、同時にしっかりとインスリン分泌を促すために炭水化物(グルコース)の摂取も必要です。ただし、糖代謝異常がないことが条件となり、糖尿病などがある場合は、治療のための食事療法に従いましょう。
消化吸収に関わる臓器
①消化吸収に関わる消化管と臓器
消化管とは、口から始まり、咽頭、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸を経て肛門に至る、食物を消化しながら運搬する一本の管です。
この消化管と、これに付属している器官(肝臓、胆嚢、膵臓)をまとめて消化器と呼びます。
消化管はその名の通り「管」です。口も肛門も外に通じる一本の管なので、口から肛門まで続く消化管は身体にとっては”体外”に位置付けられ、食物は体外を通過しながら消化されて血液、つまり”体内”に吸収されます。
②消化吸収に関わる消化管(体外)
口腔(oral cavity)
口は食物を取り込むための入り口です。食べ物を細かく砕き、唾液と混ぜ合わせることで固形の食物を柔らかくして、味覚を感じる場所です。
咽頭(pharynx)
食物が口から食堂に向かう通り道であり、同時に空気が鼻から咽頭、肺に向かう空気の通り道でもあります。主な働きとして「嚥下、呼吸、発声」の3つの働きがあります。
口から咽頭を通過する過程に問題があると嚥下機能(飲み込む能力)が低下し、むせたり詰まらせたりしてしまいます。(高齢者では特に注意が必要)
食道(esophagus)
口腔、咽頭に続き、食物を胃に向かって運ぶ25cm~30cm程度の通り道です。食べ物が胃から逆流しないように弁が存在しています。
食道から胃への運搬は重力によって落ちるものではなく、食道の筋肉が収縮することによって運ばれていきます。これを蠕動運動と呼びます。
食堂で食物の消化吸収は行われません。
蠕動運動により胃へと送られるため、逆立ちしていても自然と胃へ送られます。
胃(stomach)
食道の先にある袋です。
胃が空っぽの時は縮んでおり容積は50ml程度ですが、食後満腹の状態での容積は1.5L~1.8Lまで膨らみます。
主な胃の働きは
- 飲み込んだ食物を一旦貯留する
- 胃液と混ぜ合わせてタンパク質のみ消化する
- 胃酸によって食べたものを酸性に保つことで殺菌し腐敗を防ぐ
胃の内容物は十二指腸に少しずつ送られます。
食事後の内容物を全て十二指腸に送り出すまでの時間(GET;胃内容排出時間 gastric emptying time)は食事内容によってかなり影響を受けます。
十二指腸(duodenum)
胃から送られてきた食物が消化液と出会う場所
小腸(small intestine)
十二指腸に続き大腸へとつながる6~7mの消化管です。
小腸は空腸(上部)と回腸(下部)に分けられます。
上部2/5が空腸、下部3/5が回腸とされています。
小腸と大腸の境界部には回盲弁(バウヒン弁)があり、一度大腸へ進んだ内容物が逆流しないように防いでいます。
大腸(large intestine)
回盲弁(バウヒン弁)を超えると大腸が始まります。
大腸は盲腸、結腸、直腸からなる約1.6mの管です。
回盲弁を通過してきた食物繊維などの食物残渣が糞便となる場所です。
大腸液には消化酵素が含まれていません。
結腸では、分節運動(混ぜるような運動)、蠕動運動により、腸内容物を肛門側に運搬します。
バウヒン弁を超えて大腸に入ってきた内容物は、消化液と混ざっているため液状です。大腸での水分の吸収に不具合が起きたら下痢や便秘になります。
③消化吸収に関わる臓器(体内)
胆嚢(gall bladder)
胆汁(脂肪の吸収に関与、後述)を一時的に蓄える働きを持ちます。
肝臓(liver)
肝臓は重量が1.0~1.5kgと最も大きな内臓です。
消化管から血液へと吸収された栄養成分は肝臓をはじめに通過します
全身を循環した血液も必ず肝臓を通過し続けます。肝臓の機能は多岐にわたりますが、大きく分けて
- 栄養成分の代謝
- 解毒作用
- 胆汁生成
膵臓(pancreas)
膵臓の95%以上を外分泌細胞が占めており、残りがランゲルハンス島(内分泌細胞)です。
外分泌細胞では膵液(すべての栄養成分を消化して吸収される)が作られています。
ランゲルハンス島にはβ細胞とα細胞という細胞があります。
Β細胞ではインスリン(血糖を体内に取り込ませるホルモン)が作られています。
Α細胞ではグルカゴン(肝臓から糖を放出させたり脂肪燃焼を促すホルモン)が作られています。
つまり、膵臓は食べるという行為の後の
- 消化吸収
- 栄養の蓄積
- 蓄積した栄養を使う
という重要な役割を担っています。
消化吸収に関わる臓器の機能
①消化吸収とは
”消化”は小腸までの間に大きなサイズの食物が小さく分解されていく現象をいいます。
”吸収”は血液やリンパ管に栄養が吸収されることをいいます。
②栄養の消化吸収に関わる消化管の機能
口腔における消化
唾液には炭水化物を消化する酵素(唾液アミラーゼ)が含まれているので、よく噛みながら唾液と混ぜることで糖質の消化が良くなります。
唾液にはたんぱく質や脂質を分解する消化酵素は含まれていません。
胃の機能と消化
食物を胃酸によって殺菌する最も重要なセキュリティを担っています。
胃でたんぱく質のみ消化します。
胃液には、
- 胃酸(ph1~2の強酸性の塩酸で食物中の雑菌や細菌を殺菌、増殖抑制する)
- ペプシノゲン(塩酸によってペプシンと呼ばれるたんぱく質分解酵素へと変化して食物中のたんぱく質を消化する)
- 粘液強酸である胃酸から胃を守る
- 内因子(小腸でのビタミンB12の吸収を助ける)
が含まれています。
胃はほとんど吸収機能がありません。
胃液は空腹時でも少量分泌されています(基礎酸分泌)
空腹時でも胃内の細菌の増殖を抑制するために基礎酸分泌が行われます。
基礎酸分泌は夜間に増加し、睡眠中に雑菌が胃を通過して血液に入らないように守っています。
アルコール、カフェインは胃酸分泌を促進します。
ヘリコバクター・ピロリはウレアーゼと呼ばれる酵素によってアンモニアを作り出して身の回りを中和(中性環境に)しており、胃に定着(感染)しています。ピロリ菌にとっては胃の中には外敵がおらず安全な世界です。自然界での生き残りをかけた生物の環境適応能力を感じますね。
胃を手術で摘出したり、萎縮性胃炎で胃腺が失われたりすると、内因子が産生できなくなり、ビタミンB12が吸収できなくなります。その結果、ビタミンB12欠乏症による悪性貧血が起こります。「悪性」と呼ばれるのはビタミンB12が発見されるまでは治療法がなく致死的にあったためです。胃の摘出後などはビタミンB12欠乏に注意が必要です。
強酸性の遺産によって、食品に含まれるたんぱく質、酵素、ホルモンなではほとんどが壊れ(変性して失活する)、さらにペプシンによって分解されるため食中毒やアレルギーを起こさないように守っています。
ではでは^^