ピラティスレッスン Sくん#9
みなさんこんにちは
前回は、右腕の痺れが改善しなかった原因の考察と11回目のレッスンについてお伝えしました。
今回は、11回目のレッスンの続きをお伝えしていきます。
今回のコラムは
理学療法士
ピラティスインストラクター
運動指導者
11回目エクササイズ
サービカルノッド
Hundred and March with the Ballで腹圧を高めたので、これでやっと仰向けのエクササイズが行う準備ができました。
サービカルノッドのエクササイズの説明をしていきます。
- 首の後ろの部分を伸ばし、頸椎をニュートラルポジションに保つ。
- 頭部前方変位の改善
- ニュートラルスパインの学習
- ウォーミングアップ
- 仰向けで寝ます。今回は、腰椎伸展の代償を抑制するために、足を壁につけた状態で行います。
- 脊柱と骨盤をニュートラルポジションに保ちます。
- クライアントの場合、腰椎伸展の代償を抑制したいので、骨盤はニュートラルポジションより若干後傾方向で行います。
ニュートラルポジションから、口を開けずに顎を引きます。
頭の後ろを床につけたまま、骨盤と胸郭をニュートラルに保ちながら行います。
頸椎のニュートラルポジション
→頸椎の前部と後部の長さが均一であること、顔と顎がリラックスしていること
クライアントは、頭部前方突出が著明です。頭部前方突出のままエクササイズを行っても、腹圧が下がったままなので、エクササイズ効果が得られにくくなってしまいます。
そのため、まずは、頭頸部のアライメントを修正することが重要です。
また、エクササイズ姿勢は、テーブルトップポジションの修正です。
- 仰向けでエクササイズを始める際の、スタートポジション
- 体幹部分をニュートラル
- 股関節から屈曲
- 膝関節屈曲90°
体幹部分をニュートラルポジションで保ちつつ、股関節から屈曲するため、末梢である膝や足首は弛緩・脱力した状態で維持できるのが理想的です。
また、基本的に、肩もリラックスした状態が理想です。
このテーブルトップポジションをキープする際、
重力の影響で、
- 骨盤前傾方向
- 大腿骨伸展方向
- 膝関節屈曲方向
これらのモーメント(回転力)がかかっています。
このモーメントを腹斜筋や腸腰筋を使いながら制御するのがテーブルトップポジションの目的です。
しかし、テーブルトップポジションをとろうとすると出現する代償が
- 股関節の詰まり
- 前モモが疲れてくる
- 膝が伸びてくる
- 腰椎伸展
- 膝が90°以上曲がる
- 骨盤が過度に後傾する。
これらの代償動作の原因の本質は、
腰椎を屈曲方向に維持できないということです。
腰椎を屈曲コントロールは主に腹斜筋や腸腰筋の協調的な働きが必要になってきます。
これは、腰椎のコントロールができない今回のクライアントに最適なエクササイズなのです。
ただこのテーブルトップポジションをそのまま行うと代償のオンパレードになってしまいますので、壁に足をつけることで
脚の重みによる重力負荷を軽減+腰椎屈曲方向に誘導
したなかで、腰椎屈曲コントロールを学習することができます。
まさに一石二鳥。
このエクササイズはピラティスのエクササイズの中でも基本中の基本。
身体を思い通りに操るために必要な要素が詰まってますね。
思い通り行くと思いきや、ここでさらに問題が、
少しテーブルトップのポジションをとっていると、壁に足をつけた状態でも、腰椎伸展の代償が生じ、腰の違和感と前ももの張りの訴えが聞かれたのです。
壁に足をつけている状態でも難易度が高かったということですね。
なのでさらに難易度を下げました(笑)
脚を台の上に置いちゃいました。
これで下肢の重みは一切関係なくなるので、純粋に腰椎屈曲方向へ誘導できます。
この姿勢であれば、違和感なくサービカルノッドを行うことができました。
そして、サービカルノッドを行っていく内に、壁に足をつけたテーブルトップポジションでサービカルノッドができるようになったのです。
これは、サービカルノッドを行い頭頸部のアライメントが修正され、腹圧が高まったおかげです。
次のエクササイズに移ります。
上肢ウォーミングアップ
- 上肢のウォーミングアップ
- 中枢を安定させた中で、末梢を可動させる
- 壁に足をつけたテーブルトップポジション
- 手は気をつけの形で身体の横に
- 頭上まで両手バンザイしていきます。
- 腕を大きく横に広げながら、回して元の体の横まで戻していきます。
- 呼吸は止めないように、動いている間は、鼻から息を吸い口から吐くようにします。
代償動作
- リブフレア(肋骨が広がる)
- 顎が上がる
- バンザイするときに腕が開いてしまう(広背筋の短縮)
- 腰が反る
リブケージアームズとアームサークルズを合わせた動きですね。
バンザイの動きを行うリブケージアームズを行うことで、中枢を固定した中での末梢の動きの学習を促通できます。
また、アームサークルズの動きで、上腕骨、肩甲骨、首、胸をストレッチをかけながら、動かしていくことで、可動性向上と柔軟性向上が狙えます。
クライアントの場合では、上肢挙上・外転の動きが伴うと、痺れが出現していましたので、痺れが出現しない範囲で動かしていき、徐々に動かしていく範囲を広げていきました。そうすることで、末梢神経の滑走性を引き出し、痺れの軽減を図りました。
代償動作に関しては、「顎が上がる」代償動作を修正してしまうと、痺れが出現してしまうため、そこは許容し、リブフレアが起こらないようにすることを意識して行ってもらいました。
また、はじめは、バンザイするだけで修正できないくらいの代償動作が出現したため、プレエクササイズとして、肘の曲げ伸ばしのみを行いました。肘関節の動きを行うことで、まずは末梢の運動感覚を入力し、メインの上肢のウォーミングアップエクササイズを行いやすくしました。
また、末梢の動きを行うことで、末梢神経の滑走性向上も狙いました。
次のエクササイズに移ります
肩をすくめる Shoulder Shrugs Facing Wall (optional form roller)
首と肩甲骨の調整
- 壁に向かい、立位のニュートラルポジションで立ちます。
- フォームローラーを壁に当て、頭の上で支えます
- フォームローラーが壁を転がるように、肩甲骨を動かして肩をすくめます。
- すくめたら元に戻します。
- 首を長く保ち、ニュートラルポジションを維持するように行います。
代償動作
- 腰椎伸展
- 頭部前方突出
クライアントの場合、立位ではなく、ニーリング(膝立ち)で行いました。足関節をOFFすることで、股関節と骨盤のコントロールをより賦活する狙いです。
そして、肩をすくめたあとに元に戻す際、戻しすぎず、気持ち少しすくめた状態のところまで戻すように行いました。
クライアントは、フットワークの立位の時、肩を下げるようにキューイングすると、痺れが出現していたため、肩を下げるような動きは、神経を圧迫してしまう動きになるため、極力痺れが出現しないような範囲の運動を意識しました。
このエクササイズを行うことで、肩甲骨~首についている筋肉が調整され、元々、肩が下がり気味だった姿勢が改善されました。
すると、痺れも楽になりました。
再評価
- 右上肢の痺れ→軽減
- 左肩の脱臼感→消失
- 緩くて痛い感じ→軽減
はじめに聞かれていた症状は軽減しました。
レッスン前後比較がこちらです。
肩の位置と胸の開き具合が変わってますね
兎にも角にも、一度生じてしまった症状は軽減方向に向けられて良かったです。
今回でSくんのレッスンは一旦終了となりました。
頭頸部からの神経の問題が顕著であるということが別の方の治療で判明し、その方と治療の方向性を話し合った結果、まずは運動療法ではなく、徒手療法で神経の問題をクリアしようという結論に至りました。
オマケですが、こんな風に一人のクライアントを多角的に見れるって素晴らしいなと思いました。
また、神経の問題がクリアしたら、腰痛の改善を目的にレッスンをする予定ですのでお楽しみに
ではでは^^