ピラティスレッスン Sくん#8
みなさんこんにちは
前回は、10回目のエクササイズで”右腕の痺れ”が改善せず、むしろレッスン前より悪化させてしまったところまでお伝えしました。
今回は、右腕の痺れが改善しなかった原因の考察からお伝えしていきます。
今回のコラムは
理学療法士
ピラティスインストラクター
運動指導に関わっている人
それではやっていきましょう
右腕の痺れが改善しなかった原因の考察
まず結論から
- 胸郭出口症候群の病態の把握が不十分だった
- クライアントの評価が不十分だった
- 胸郭出口症候群に対する運動療法の目的を理解していなかった
- 末梢神経の理解が不十分だった。
- グルコース不足
以上5つが挙げられます。
1つずつ説明していきます。
胸郭出口症候群の病態の把握が不十分だった
まず今回の右腕の痺れですが、症状から推測するに胸郭出口症候群でした。
簡単に胸郭出口症候群についてまとめると
胸郭出口症候群
絞扼部位による分類:斜角筋症候群、肋鎖症候群、小胸筋症候群
症状:腕を上げる動作で腕が痺れる
原因:腕神経叢や鎖骨下動脈の絞扼・圧迫
運動指導に携わっている人からしたらこんなの当たり前じゃんと思うかもしれないのですが、
この基本の知識を疎かにして、クライアントと向き合ってしまいました。
プロ失格ですね。
クライアントの評価が不十分だった
上記でまとめたように、同じ胸郭出口症候群でも、原因となる絞扼部位が異なるため、対処が変わってきます。
クライアントの場合は、症状は胸郭出口症候群の症状でしたが、
結論、胸郭出口症候群ではなく、末梢の尺骨神経の問題で腕の痺れが生じていました。
にも関わらず、胸郭出口症候群に対するアプローチをしていました。しかも、理解が不十分な状態で。
これでは、良くなるわけないですね。
しっかり、評価を行うことの大切さを改めて学びました。
胸郭出口症候群に対する運動療法の目的を理解していなかった
僕は胸郭出口症候群の運動療法は、ひたすら腕神経叢と鎖骨下動脈付近、つまり頸部と肩甲骨の周辺の滑走性を引き出せばいいと思っていました。
エクササイズにクライアントを合わせていました。疼痛が出ているのにも関わらず、エクササイズを続ければ、疼痛が軽減するだろうと思い込んでいました。
クライアントの症状とクライアントの動き方に合わせて、エクササイズを選択すること。エクササイズ方法も決まった型に囚われず、柔軟に対応していくことが必要だと再認識しました。
繰り返しにはなりますが、胸郭出口症候群の絞扼部位に合わせて、さらには原因となる末梢神経に合わせて、運動療法を選択していく必要があります。
末梢神経の理解が不十分だった
結局今回のクライアントの原因は尺骨神経の問題でした。
しかし、僕は胸郭出口症候群が原因だと決めつけていました。
何事も決めつけはNGですね。
また、行う運動療法が末梢神経にどんなストレスを及ぼすかを理解できていませんでした。
思えば、クライアントからサインは出ていました。
レッスン中の「腕が痺れてくる」という訴えをないがしろにしていました。
動きの中でクライアントを評価するということの根本を理解しました。
理解しただけで、実際の臨床では、活かせていない
グルコース不足
腕の痺れが悪化したときですが、
クライアントは昼ごはんを食べれていなく、グルコースが不足していました。
運動するためには、もちろんエネルギーが不可欠です。
ATP(エネルギー)産生するためには、グルコースと酸素がないとATP産生することができません。
グルコースと酸素がない状態でATPを生み出すには、筋肉の中に蓄えてある、筋グリコーゲンを利用します。この筋グリコーゲンは、筋肉を分解することで利用できます。
運動するためには、筋肉が働くことが必須なのに、筋肉を分解してエネルギーを作り出していたら本末転倒ですよね。この辺の栄養については、栄養のコラムをご参照ください。
以上が、今回右腕の痺れが改善しなかった原因の考察です。
これらの反省を踏まえた上で11回目のレッスンを行ったので、お伝えしていきます。
評価
11回目のレッスンは、10回目のレッスンの翌日に行ったため、症状はそこまで変わりなく、
- 右上肢の痺れ
- 左肩の脱臼感
- 緩くて痛い感じ
これらの訴えが続いていました。
今回は、ご飯もしっかり食べれていたため、エネルギーはバッチリでした。
前回の反省を踏まえ、今回は痛みが出ない範囲での運動+症状と身体の状況に合わせた運動療法の選択を念頭に置き、行っていきました。
11回目エクササイズ
壁フットワーク
これは外せないエクササイズですね。
フットワークでクライアントの苦手な股関節の動きと足部の運動学習を図っていきます。
ただ、いつも行っているものと異なる点は、”代償動作の許容”でした
壁のフットワークでは、頭・背中・お尻を壁につけた状態で、顎を引き、胸を開き、肘はできるだけ伸ばした状態、肩は上がらないように、というように、ニュートラルポジションをとった上でエクササイズを行う。ということに拘っていました。
しかし、今回のクライアントは腕の痺れが生じており、ニュートラルポジションを取ることで、痺れが増強してしまうのであれば、無理にニュートラルポジションを取るべきではないのではと思いました。
クライアントが、痺れが出現してしまうニュートラルポジションの修正は、
- 胸を開く
- 顎をひく
- 巻き肩にならない
これらの修正についてはキューイングを出さずにフットワークを行いました。
すると、クライアントさんは、いつもやってるときよりやりやすくなったと。
おそらく、ニュートラルポジションを無理に取ろうとして、本来のニュートラルポジションを取ることで得られる効果が得られず、かえって、身体に無駄な力が入ってしまっていたんだなと感じました。
仰向けニュートラル
次に、仰向けでのエクササイズを行おうとしましたが、
仰向けは以前でも腰が反ってしまい痛みが出てしまう問題があったため、
今回は、両足を壁につけて仰向けを取りました。
両足を壁につけると、股関節屈曲角度が大きくなるため、腰がまるまる方向へ誘導できます。
しかし、クライアントは両足を壁につけることが辛く、腰も時間経過とともに痛くなってくるという訴えがありました。
このことから、クライアントは思った以上に腹圧が著しく低下していることがわかりました。
なので、目的のエクササイズを行う前に腹圧高い状態をまずは作り出そうと思い、
腹圧を高めるエクササイズを行いました。
Hundred and March with the Ball (ハンドレッドアンドマーチウィズザボール)
開始姿勢
膝を曲げ、足の裏を床につけた状態で座ります
腰を丸め、ボールを腰に当てておきます
エクササイズ
足踏みをするように、片脚ずつ上げたり下げたりします。
腰が丸まったポジションをキープしながら行います。
次に、両腕を頭上に伸ばした状態で、脚の上げ下げをします。
よくある代償
- 頭部前方突出
- 腰椎伸展
- 肩がすくむ
クライアントは、このエクササイズで1番注意して欲しいのが、腰椎伸展の代償でした。
案の定、ボールを腰に当ててるくらいでは、代償を防ぐことは難しかったため、さらに僕が徒手的にアシストをしました。
その中で、片脚ずつ上げ下げしてもらうと、徐々にアシストなくても、腰椎伸展の代償がみられなくなってきました。
このような形で、エクササイズの難易度を限りなく下げた状態から始め、代償なくできてきたら、少しずつ難易度を上げていきました。
このエクササイズを行った後、先程は、壁に足をつけるのが辛く、腰痛が出現していた、両足を壁につけての仰向けをとってもらうと、問題なく仰向けの姿勢をとることができました。
本日はここまでで、続きは次回のコラムでお伝えします。
今現時点の気づきでは、
- 必ずしもニュートラルポジションを取る必要はない
- エクササイズの開始ポジションも必ずしも教科書通りじゃなくていい
- 本質は、目的となるエクササイズの効果が行えるようにこちらが難易度を設定すること
- 本エクササイズの前にプレエクササイズを挟み、本エクササイズが行えるような身体の状態を作る
ではでは^^